これはめずらしい!
海藻の代替肉を使ったバーガーパテ
ケルプ(海藻)を使った代替肉を開発したアクア社のケルプバーガー(バーガーパテ)です。
アクア社からは現在、ジャーキー、バーガー、パスタなどが販売されており、原材料の海藻はアメリカ東海岸メイン州で採取されたもの。メイン州はロブスターなどの魚介類のブランド産地で、日本でいう「当店では羅臼昆布を使用しています」みたいな感じでしょうか。
彼らはケルプと表記していますが、サイトで紹介されている写真をみると昆布のようです。プラントベースのバーガーは通常は豆やキノコを原材料にする場合が多い中、彼らは海藻をゼロ・インプットと強調しています。つまり水や土、肥料も必要としないので、環境保全につながり、さらに上を行くサスティナブルだと。海藻を活用するという発想自体は日本人にとっては驚くことではないですし、ジャーキーに至ってはおしゃぶり昆布かとツッコミを入れたくなりますが、健康オタクを意識してなのか海藻で腸活というような宣伝文句も謳っています。
届いた商品の箱には大きく「ノンGMO、ソイフリー、グルテンフリー」と、今の健康食のメインストリームになっているキーワードがしっかり表示されています。
バーガーは冷凍で保存するようになっており、二つずつで真空パックされています。賞味期限はなんと一年もあります。今後は海藻でイミテーションのクラブケーキも販売するとのこと。
栄養成分という観点からこの商品をみていると、ビタミンB群が多く含まれているのが特徴で、チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)に関しては1日の摂取推奨量をほぼ満たしているとも言えるのではないでしょうか。実はビヨンドバーガーにもB群がかなり豊富に入っています。肉食をしない人たちにとって最も不足するビタミンがBというのが理由と思われます。
そのものの味を確かめるために、まずはただ焼いて何もつけずに試してみて、さらにはハンバーガー好きの息子に調理してもらい、普通にハンバーガーとしても食べてみることに。
グリルするとその旨味がより引き立つようですが、グリルセットを外に広げるには今の時期は寒すぎるので、フライパンで焼いてみることに。息子は焼きながら、味噌汁みたいな、なんだか懐かしい匂いがすると。
表面はカリカリしていて、塩味や旨味がありますが、海藻そのものの味はそれほど感じませんでした。ただ細かく刻まれた海藻は思いのほかたくさん入っているようにみえます。原材料にはないのですが、なぜかセロリーの味を強く感じました。海藻の味をなるべく隠すためのスパイスの一部なのかもしれません。パテそのものはかなり崩れやすく、食べているうちにバラバラになってしまいました。息子の言葉を借りればビミョーといった感じです。(余談ですが、アクアのサイトではこのバーガーをUmamiと表現しています。Umamiという単語はここ数年でアメリカで一般化した言葉になりました。)
プラントベースのバーガーは二つの考え方があると思われます。ひとつはテクスチャーや味をいかに肉に近づけるか。ビヨンドやインポッシブルの代替肉はまさにこれにあたります。もうひとつは、レンズ豆バーガーなど、材料そのものをアピールするやり方です。ケルプバーガーはもちろん後者でしょう。
ハンバーガーとしては食べづらいところもあるので、細かくして、調理してみることに。アクアのサイトで紹介されているレシピを参考に、パテを解凍して、クミン、パプリカ、ニュートリショナルイースト(酵母の一種でチーズのような味わい)で炒め、タコスにしてみました。炒めると香ばしい匂いがより立ち、サルサをつけて食しましたが、これはもう文句なしに美味しかったです。
さらに最近スーパーに出回っているチックピー(ひよこ豆)パスタを使って、パスタソースに。チックピーパスタだと、せっかくのパテのグルテンフリーを無駄にすることはありません。
両方ともアクアのサイトで紹介されているレシピを参考にしました。パスタソースの方がなぜか肉感が強く感じられ、美味しいボロネーズソースのようだと家族にかなり好評でした。
バーガーひとつあたりの金額は4ドル16セント+送料。決して安くはありませんが、アメリカの健康食としてはこんなものだろうなと。賞味期限も長いし、バーガーで使っているパテを挽肉としても販売していますので、それを活用するのは今後も大いにアリだと思いました。
試食・文 / 小野聖子(米国コネチカット在住)