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Book Review

食品添加物はなぜ嫌われるのか
食品情報を「正しく」読み解くリテラシー

著者:畝山智香子

出版社:株式会社化学同人

「食品の安全には、ちょっと詳しい」と自認している人にこそ読んでほしい一冊

これを書いている私自身、食品添加物を気にする人のひとりである。添加物は全て悪である、とは言わないが、「日本は認可されている添加物の数が他の国よりも断然多い」などという話を聞くと、やはり体に害があるものなら避けたいと思う。

しかし、その根拠は?と聞かれると、その答えは曖昧になってしまう。さまざまな情報が溢れる昨今、添加物の危険性を示す情報も、逆に添加物は安全とする情報も数えきれないほど存在しており、その中には、研究者による論文や、ある程度権威ある機関が認めるエビデンスも含まれる。人は、自分が正しいと信じたい側の情報を多く集めがちな傾向があるというが、そうだろうと思う。

「添加物など無かった昔の食べ物は安全だった。」というフレーズを時々耳にするが、それは果たしていつの時代のどこの話なのか。添加物以前の加工食品が、いかに危険な混ぜ物・偽物だらけだったのかということは、歴史を振り返るとわかることだし、「昔は良かった」がイメージであり、とても曖昧に使われていることに気づく。

「なぜ、私たちは添加物を嫌だと思うようになったのか」。

本書は、国立医薬品食品衛生研究所の安全情報部長である著者が、食品の安全をめぐる歴史を紐解き、その中で生まれ今も根強く残る、思い込みや誤解を指摘しつつ、嫌われるようになった理由を理論的にかつ、わかりやすく説明している。私自身、読み進むうちに自分の思い込みに気がつき、何度も「なんだ、そうだったのか!」と膝を打った。

野菜の残留農薬も気になるし、食肉も抗生物質やホルモン剤が使われていると聞いて心配になる。有機栽培がいいと思うが、有機なら100%安心というのも少し違うと思う…こんなふうに、いろいろなことが少しずつ心配になっている人は多いのではないだろうか。

本当の「食の安全」とは何かを知るためには、巷に溢れる情報を読み解く力が必要だ。流れてくる情報を鵜呑みにするのではなく、情報の信憑性を見極めて取捨選択することが大事だと改めて思った。その上で、ひとりひとりが納得のいく食品を選ぶ生活を送るのが理想ではないだろうか。

文 / 井澤裕子

【目次】

  • 第1章 終わらない食品添加物論争
  • 第2章 気にすべきはどちらかー減塩と超加工食品
  • 第3章 オーガニックの罠
  • 第4章 新しい北欧食に学ぶ
  • 第5章 国際基準との軋轢
  • 第6章 食品表示と食品偽装
  • 第7章 プロバイオティクスの栄枯盛衰
  • 第8章 食品安全はみんなの仕事