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Book Review

食べものから学ぶ世界史
人も自然も壊さない経済とは?

著者:平賀 緑

出版社:岩波書店

高校生にもわかるように書かれた、資本主義経済がわかる本

新型コロナ感染症のパンデミックで、世界観が大きく変わり不安を感じている人は多いと思う。しかし、それ以前から世界は少しずつおかしなことになってきていたのだ。気候変動による地球環境の問題、食や農のさまざまな問題、格差社会や貧困問題…現在私たちが直面している問題は深刻だ。

しかし、著者の平賀さんの言葉を借りれば、そもそも資本主義経済とは、人間の健康や自然環境などは切り捨て、お金で計れる部分だけでの効率性や成長のみを目指す仕組みだから当然のこと。さまざまな問題は、資本主義のシステムとしてはその目的通り真っ当に機能している結果、といえるのだそうだ。

世界は資本主義システムのもとに経済成長し続け、人々の生活はどんどん良くなるはずではなかったのか。一体どこで間違えてしまったのか。資本主義システムは盤石ではなかったのか。多くの問題が噴出していてもなお経済成長をめざしていて本当に大丈夫なのか。その答えを探すには、資本主義経済の成り立ちやそのカラクリを理解する必要がある。

本書は、生命の糧である「食べもの」が「商品」へと変わった歴史を紐解きながら、資本主義経済の何たるかを教えてくれる良書だ。

文 / 井澤裕子

【目次】

序章 食べもの方資本主義を学ぶとは

1章 農耕の始まりから近代世界システムの形成まで

2章 山積み小麦と失業者たち(世界恐慌から米国中身世界の成立まで)

3章 食べ過ぎの「デブ帝国」へ(戦後〜1970年までの「資本主義の黄金時代」)

4章 世界の半分が飢えるのはなぜ?(植民地支配〜1970年代「南」の途上国では)

5章 日本における食と資本主義の歴史(19世紀の開国〜1970年代)

6章 中国のブタをグローバリゼーション(1970年代〜現在)

おわりに 気候変動とパンデミックの時代に経済の仕組みを考え直す