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フードテックジャパン大阪 2022

ついに大阪でも開催。
見応えあり!フードテックジャパン

2020年、2021年と2年連続、幕張メッセにて開催された『フードテックジャパン東京』。

食品向けのロボットや製造装置、IoTやAIのソリューションを扱う会社が出展し、自動化や効率化を検討する食品メーカーや外食チェーンなどにプレゼンテーションをすることを目的としたイベントです。

食品業界は、人手不足解消や労働環境の改善が課題となっており、『第2回フードテックジャパン東京』では、100社以上の企業が出展。来場者数は16,000人以上、セミナー受講者数は5,000人以上と盛況でした。

そのフードテックジャパンが3月9日〜11日、大阪でも初開催されるというので見にいきました。場所はインテック大阪。11日は最終日にも関わらず来場者で賑わっていました。

出展社数はリーフレットには210社とありましたが、同時開催の「再生医療EXPO」「インターフェックスWeek」の出展社を合わせた数字で、ウェブサイトでみると、食品・飲料・レストラン・飲食店分野の出展社は45社だったようです。お話を伺った、出展社のいくつかをご紹介します。

●NTTビジネスソリューションズ(株)(NTT西日本グループ)

食品ロス問題の解決策として、「地域食品資源循環ソリューション」に取り組んでいます。

NTTビジネスソリューションズのブース

今回案内していたのは、「フォースターズという名前の食品残渣発酵分解装置を使ったリサイクルシステム。生ゴミをフォースターズに投入し、サーベリックという微生物資材を加えると24時間で分解し堆肥に。サーベリックスは、カルピス株式会社の開発によるものだそうです。早く分解するため悪臭などを出さない装置です。NTTビジネスソリューションズがこの装置を、食品工場やスーパーマーケット、給食センターなど、食品関連事業者にレンタルし、溜まった堆肥を展示の移動式循環リサイクルカーで引き取って、リサイクルセンターに運ぶというシステムです。事業者にとっては廃棄の手間も省けて、しかも廃棄や回収のコストを大幅に削減できるメリットがあります。

食品の廃棄量は、家庭消費は7割弱でもっとも多いと聞いています。家庭用小型フォースターズも、ぜひ開発していただきたいと思いました。

移動式循環リサイクルカー

●Unifiller Japan

カナダの食品加工機会サプライヤーUnifiller Systems,Inc.の日本法人で、カナダの協働ロボット・自動化システム開発企業Apex MotionControl,Inc.の日本総輸入販売元。

食品業界における人手不足やそれに起因する職員の負担増を、最新のテクノロジーを駆使して業務を高効率化することで改善します。

代表取締役社長の佐藤さんにお話を聞きました

ソースやクリームなどを充填する機械の説明をしていただきました。カナダのUnifiller Systems,Inc.の製品は世界的にかなりのシェアを占めているそうです。見せていただいた製品の特長は、まず、エアシリンダーを搭載していて動力が空気圧ということ。コンプレッサーは電力で動かしていますが、空気圧の利用で省電力になることと、極端な室温(極端に温度が高い、低い)の作業環境にも適しているそうです。

もう一つは、シンプルなデザインに設計されていること。丸ごと洗浄が可能で、クリーニングやメンテナンスは最小限の労力でできるとのことでした。

移動や機械の調整なども簡単にできる設計で、従来力仕事だった作業が女性でもできるようになっているそうです。また、操作の仕方が誰にでもわかるように、機械に書かれた表示を文字ではなく絵で示すなど、ユニバーサルなデザインです。作業する人の負担を減らす技術を追求した、良いデザインだと感心しました。

調節の表示がウサギ(早い)とカメ(遅い)

(株)中西製作所

学校給食や病院、ファーストフードやレストランで使用する、業務用厨房機器の製造・販売をする会社。調理と洗浄の省人化・省力化を提案しています。

今回は、煮る・焼く・蒸す・殺菌まで水蒸気で行う連続式過熱水蒸気調理器「SVロースター」と加熱調理した食品をピッキングし容器に詰める作業を自動化するロボット「マルチクルー」、食器洗浄に必要な作業員を約半数に減らせるという、セントラルキッチン向けの洗浄システムを会場で稼働実演していました。

洗浄システム。トレーごと入れた食器が洗浄されて出てくるまでは長い工程。
食器をひっくり返して洗浄するパートは企業秘密なので見えなくなっています

昨今の感染症の蔓延など考えると、効率だけではなく衛生面でも今後必要性が増す分野だと感じました。

●(株)バイナル

天然抗菌成分GSE(Grape Fruits Seed Extract:グレープフルーツの種子エキス)を使った、除菌・抗菌・抗ウイルススプレーを販売しています。

携帯用50mlのシトラバスター。300ml入り(2,750円)や詰め替え用の商品もある
GSEはグレープフルーツの種子エキスのこと

今までは医療業界向けだけに販売されてきましたが、コロナ渦で需要が高まり、一般用にも販売を開始したのだそうです。用途としては、手指にかけるのではなく、調理器具、ドアノブやリモコンなど、メガネやマスク、衣類など身につけるもの、ベビーやペット用品、トイレなどにスプレーして、除菌、抗菌するためのものです。

シトラバスターの特徴は、

  • 抗菌力が強いフラボノイドで、ウイルス・細菌を99.99%除去
  • 一度スプレーすると3ヶ月効果が持続
  • 無農薬・無添加・無香料で万が一口に入っても安心
  • 成分はGSEと精製水のみ。アルコール・塩素フリー
  • 吹きかけたものの変質や変色が起こらない
  • 約3年の長期保存

50mlで1,100円と価格は高めですが、安心で効果が持続することを考えると、むしろリーズナブルかもしれません。

●神戸大学 大学院システム情報学研究科

神戸大学大学院の藤井信忠准教授の研究室です。「がんこ寿司」を始め、関西を中心に約90店舗を展開するがんこフードサービスは、実際の注文データや、調理場の人員のシフト、調理にかかる時間などのデータを使って、調理場業務をシミュレーショする研究を行いました。その結果、最適な調理場を設計することで、売り上げを維持しながら作業時間を大幅に短縮できることを実証して話題になりました。この研究で、シミュレーターの開発を担当したのが、藤井准教授です。

モニターに映っている方が藤井准教授

もとは工場の生産ラインなどで使われていたシステムを、がんこフードサービスの成功例のように、飲食店など様々なケースで応用する事例が生まれているそうです。例えば、人流データのシミュレーションをもとに作る地下街の店舗配置計画や、農作物の生育状況と市場の需要状況、在庫状況などから導き出す食のサプライチェーンの最適化など。情報学の研究を使って実社会に価値を生み出す、産学連携のベンチャーが立ち上がろうとしているようです。

人流を計測し、入店者数をシミュレーション。その結果から作る店舗配置計画

●講演聴講:「フードロス対策が新たな社会貢献!飲食店の新事業」

株式会社アレフ

株式会社アレフ(本社:札幌市)は、全国に344店舗を展開するハンバーグレストラン「びっくりドンキー」をはじめ、パスタ店やビアパブなどを経営するレストランチェーン。同社の掲げる使命、『人間の健康と安全を守り育む事業の開拓』『人間の福祉を増大する事業の創設』『自然を大切にする事業の展開』に則り、早くから環境問題に取り組んでいます。

登壇は(株)アレフの広報担当 渡邊大介氏とエコチーム廃棄物管理担当の伊藤公一氏

取組み内容を簡単にまとめると、

  • 店舗や工場でのエネルギー使用量を減らす取組みでは、2020年度には、対2013年度比で66.5%にまで削減しています。
  • 脱炭素社会の実現のため、使用電力の75%を再生可能エネルギーに切り替えています。
  • 店舗の生ゴミやビール醸造所から出るビール粕を自社のバイオガスプラントでバイオガスと液体肥料を作っています。
  • 店舗からでる廃食用油のほか、学校や家庭から回収した廃食用油を自社バイオディーゼル燃料化プラントにてバイオディーゼル燃料を製造。バイオガスプラントの発電燃料や、トラクター燃料、地域イベントで使う発電機の燃料などに使用しています。
  • 廃食用油は、それ以外にも、飼料、肥料、インク原料、石鹸、工業用オイルなどさまざまなリサイクル原料として活用しています。
バイオガスプラントのイメージ図(株式会社アレフのHPより)

(株)アレフは他にも、持続可能な社会を実現するための様々な活動を行なっています。中でも、同社が2006年に北海道恵庭市にオープンした、エコロジーテーマガーデン『えこりん村』は、環境問題へのさまざまなアプローチや健全な「食」への提案など総合的に展開している施設。ぜひ一度訪れてみたいと思いました。その他の活動や『えこりん村』について、詳しくは(株)アレフのウェブサイトでご確認ください。

ほかにも、数多く各社の展示を見せていただきました。展示会には、実物を見てその場で質問や相談ができる良さがあり、知らなかった製品や技術に出会える楽しみもあります。第2回の開催も期待しています。

取材・文 / 井澤裕子

フードテックWEEK

第2回フードテックジャパン大阪