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農林水産省

ニッポンフードシフトフェス@兵庫、開催レポート

NIPPON FOOD SHIFT(ニッポンフードシフト)FES.@兵庫が2023年1月14、15日、神戸市で開催された。

ニッポンフードシフトとは農林水産省が主導する国民運動。「食から日本を考える」をスローガンに、食と農のつながりの深化に着目した取り組みが全国各地で展開されている。
特徴は、次世代を担うZ世代をメインのターゲットとしているところ。大学生など若い世代を中心とする、「食」に関連するコミュニティや活動を、地方自治体や農林水産省がバックアップする。

会場の様子

「SHIFT(シフト)」という名称からも伝わるが、食を取り巻く環境は、地球環境の変化や世界規模の人口増加、日本の本格的な高齢社会の到来により、今後大きくシフトしていく(変わっていく)ことが予測されている。変わっていくというより、変わらざるを得ないという方が近いかもしれない。

そこで、次世代を担う若者たちに農業や漁業のことをもっと知ってもらい、重要性を感じてもらって、農業の持続性、ひいては国の食糧安全保障問題の解決に取り組む人材を育てる必要がある。ニッポンフードシフトのミッションはそこにあるのだろう。

2021年にこの運動が始まって以来、さまざまな取り組みが行なわれている。『Meets Regional』や『ダ・ヴィンチ』などの雑誌で特集記事を連載する、吉本興業とのタイアップで若手芸人による取材動画を配信する、テレビ番組との連携企画で高校生のプレゼン大会を開催する、日本各地でフェスを開催するなど、取り組みは多岐にわたる。今回のNIPPON FOOD SHIFT FES@兵庫もその一つだ。

「トークセッション」「展示・体験」「マルシェ」の3部門

トークセッションでは、若者のコミュニティ「もぐもぐふぁーむラボ」による、農作物の生産から流通、消費までの現場体験からの学びについての発表や、国産原料100%のスパイスカレーを開発したZ世代のトーク、地産地消や農水産業への人々の関心を高めることを目的として、神戸市が民間と共催して行っている「EAT LOCAL KOBE」の活動に関する話など、開催期間中2日間にわたり、充実したトークセッションが繰り広げられた。

国産原料だけで作るカレーを開発した、大阪のスパイスカレー店『堕天使かっきー』さんと、岡山美作の飲食店『OHAYO』の村上さん

展示・体験では、京都芸術大学情報デザイン科による、食関連課題の発見〜解決のためのアイデアを形にしたグループ展と、龍谷大学農学部よるチョコレート菓子の販売が行われた。龍谷大学のチョコレートは、学生たちが栽培・収穫した落花生を使用し、食品の輸入や製造を手掛ける日仏商事(株)と共同開発したものだ。マーケティングから、製造、パッケージデザインなど全ての工程に学生がかかわっており、開発までのプロセスも展示されている。

京都芸術大学の展示『シ展。2022ー2023』
京都芸術大学の展示『シ展。2022ー2023』

チョコレートのクォリティの高さに驚いた。見た目の美しさといい、味といい、パッケージのセンスといい、なかなかの出来だ。「サロン・ド・ショコラ」に出ていてもおかしくないと私が言うと、このプロジェクトを指導された先生も相好を崩されていた。

龍谷大学のBONBONS de CHOCOLAT。日仏商事(株)のチョコレートブランド「CACHALOT」との共同開発
BONBONS de CHOCOLATの開発を手がけた学生さんの一人。熱心に説明してくれた

マルシェも盛況だった。兵庫県各地から、野菜や米、果物、お茶や蜂蜜、卵、加工食品や乳製品などが集まり、ところせましと並んだブースでは、商品を通して、生産者と消費者の間で楽しい会話が生まれていた。

生産者さんとの会話が楽しいマルシェ

昨年、ニッポンフードシフトを進める、農林水産省の政策課、食糧安全保障室を訪問させていただき伺った話が、実際にフェスを体験してようやく実態として理解できた。
ニッポンフードシフトフェスが、今後も全国各地で行われることで、多くの人々の食糧問題を考えるきっかけになってほしいと願う。

取材・文 / 井澤裕子

ニッポンフードシフト